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芸術・文化の薫るまちづくり~カナダ・フランスの事例より~
9月15日(土)
佐賀県有田町にある佐賀大学有田キャンパスにてSMAART公開講座「芸術文化の薫るまちづくり」を開講しました。
講座当日の有田は真夏が戻ってきたような暑さ。
早朝までの雨が嘘のように、青空が広がりました。
有田公開講座の講師は、昨年度のSMAARTでも講師を務めていただいた明治大学の菊池先生と関西大学の佐々木先生です。
また、聴講には有田や佐賀から15名ほどの一般参加がありました。
まずは菊池先生より、〈カナダ〉の文化政策事例に関してレクチャーしていただきました。
はじめに、カナダの基本情報、カナダの文化的特性を歴史的背景を丁寧に解説されました。
カナダは二つの国(イギリスとフランス)から占領された歴史があり、独立後もアメリカの領土に挟まれているという地理的環境にあることから、いかに独自の文化を守っていくかという思想が強いそうです。
よって、カナダでは国のアイデンティティを軸に文化政策が取り組まれている背景があるということでした。
また、大規模国際イベントの開催都市であるゆえのメリット(経済効果や世界へのアピール)やデメリット(インフラ投資)双方の解説もされました。
持続・継続可能なまちづくりを行うためにカナダで取り組まれている文化政策の在り方を映像も使いながら分かりやすく紹介していただきました。
次に、関西大学の佐々木先生より、フランスの文化政策を数都市の再生(再開発)を事例にレクチャーをしていただきました。
ナント市の事例では、造船業を中心とした産業都市が文化事業を充実させ文化産業を創出するに至るまでの歩みを学ぶことができました。
開催される文化イベントが、市民にとってどうであるのかを考え方に取り込み、市民を排除することなく都市独自の方策を模索し、さらに観光客にとっても魅力を感じてもらえるように工夫されているという事でした。
「文化・芸術」は、役割として経済的意義と人間的意義の2つがあることへの理解、また、様々な分野や部門をつなげていく紐帯(社会を形作る結びつき)になることが必要で、これにはやはり行政による支援も不可欠であることも理解できました。
現在の日本では政令都市における市民一人当たりの芸術文化事業費予算が非常に小さいことが(前回までの講座でも繰り返し言われていますが)問題視されています。
日本ではどうしても経済効果に目を向けがちですが、市民の連帯(コミュニティ)を生み出すために芸術・文化が必要であると。
「精神的な連帯」をかみ砕く牙=文化
「文化の牙を磨く(=かみ砕き理解する力)」ことの必要性は、今回の講座でも改めて重要なことだと学ぶことができたように思います。