継承と進化 − 美術・工芸教室の継承と
ミクストメディアの新設
美術・工芸

　美術・工芸分野には、西洋画、日本画、彫刻、漆・木工芸、染色工芸、視覚伝達デザインの専門分野が置かれ、それぞれ前身の美術・工芸教室を引き継ぐ形で専門分野のカリキュラムが組まれます。学部の名称は変わりますが、芸術表現コースは美術・工芸教室を引き継ぎ「実技」が教育の中心にあることは変わりません。それを本学部では「手わざ」の継承として芸術表現コースの教育方針の柱にしています。科学技術の進化により、実際に描く、作るという手仕事は就職後の仕事現場では少なくなっているかもしれません。しかし、「描く」「作る」ということを通して培われた力は、直接的に、または「物を見る」「発案する」「計画する」といった応用としていろいろな場面に生きてくるはずです。

　一方、今までの美術・工芸教室に無い専門分野、「ミクストメディア」が新設されます。ミクストメディアは、絵画、彫刻、写真、映像などの素材・技法にとらわれない分野を跨ぐ表現です。作品のテーマを多彩な素材を組み合わせ応用することで表現するこの分野が加わることによりコース全体の交流が促され、専門分野の外にも視野を広げた表現が生まれることが期待されます。空間や場との関わりといったことも重要となる地域においての表現活動や、幅広い視点から芸術創造にかかわる知識やスキルを獲得するという本学部の目的には不可欠な存在といえるでしょう。伝統の継承と革新のバランスを保ちつつ、美術・工芸教室は進化発展していきます。

詳しくみる

やきものを多面的・総合的に学ぶ
有田セラミック

　有田セラミック分野では、"やきもの"を産業・文化・表現・科学など様々な角度からとらえ、革新を伴い時代に強くアピールできるもの作りを探求します。ろくろや鋳込みの技法を使った器作り、絵付け技法の修得にはじまり、立体表現などを含め幅広く"やきもの"による表現を学ぶことができます。また、創作活動に加え、工学やマーケティングなど多面的なやきもの文化に対するアプローチもここでは行います。例えば、器作りでは食文化の研究と共に、材料研究や分析から新しい機能にチャレンジすることで、社会の要求に応え、使い手に喜ばれるもの作りを目指します。様々なやきものに関わる探求は、冒険者のそれと同じく、人の営みの広いフィールドの中で、どこに隠れているか解らない未知を追求するような喜びがあります。

　また、佐賀には有田や伊万里、唐津という日本の代表的やきもの産地があります。佐賀大学が2008年から唐津市で取組んだ「ひと・もの作り唐津プロジェクト」では、伝統工芸である唐津焼が地域社会と結びついてどのような形で地域に貢献しながら良い作品を作り出すかを実践し成果を挙げています。産地を背景とすることで、学生は生産現場に息づく技術と知恵を吸収し自身の表現へと生かすと共に、産地は活力を得ます。陶芸作家、陶磁器デザイナー、セラミック工学の研究者や経営者として、総合的に文化を理解し、産地のあり方にも積極的に関わっていきます。

詳しくみる

時代がうねる。現在(いま)をデザイン
地域コンテンツデザイン

　確かな発想力と表現力を土台として、変貌し続ける社会に柔軟に対応できるデザイナーやアーティストの育成を目指します。社会のニーズを読み取り、着想から実現へのプロセスとメディアの使い分けを実践し、チームワークも重視します。デジタルメディアを効果的に介しながら情報やコンテンツをつくりあげ、重要とされる知財マネジメントも学びます。

　時代を見据え、社会の変化や課題に対応するデザイン思考やシステム思考を抱き、理念・発想力・企画力・行動力・国際性などを身につけ、地域と共創できる力強い人材を育てます。

　アート、デザイン、テクノロジーを背景として、情報デザイン、映像デザイン、コンテンツデザインの領域を学びます。先端的な情報伝達技術（ICT）を駆使する能力と、造形力、構想力、思考法、身体表現等アナ ログ的能力の二つを融合することで、人々の心や知の豊かさとコミュニケーションに貢献する人間中心のコンテンツデザイナーの育成を目指します。

詳しくみる

マルチな能力をもったキュレーター養成
キュレーション

　キュレーターとは何でしょうか。辞書を引くと、「学芸員」と載っているはずです。芸術地域デザイン学部地域デザインコースのキュレーション分野では、もちろん学芸員、すなわち博物館や美術館で働く専門家の養成を目指しますが、それだけではなく、企業、自治体、ＮＰＯ、そしてアーティストたちの間に入って、アートをつかった企画やイベントを行う専門家（＝キュレーター）の養成も目指します。キュレーターが企画するのは展覧会、地域の文化財や地域のさまざまな場を生かしたイベントなどさまざまです。

　そして、本学部でしかできないキュレーター養成とは何かといえば、単なる美術史、歴史、考古学の知識やそれらのリサーチの手法を身につけているだけではなく、さまざまな人々とともに協働する力、コミュニケーション力、そして経営・流通の知識を持ち、また、作品の素材や技法などについても熟知したキュレーター養成です。欧米のような専門分化がまだまだ進んでいるとは言えない日本の博物館や美術館の現場、そして、さまざまなアートの現場で何が求められているかと言えば、このような総合的、多面的な知識や技能をもった学芸員やキュレーターです。本学部では、専門性を持ちながら、このようなマルチな力、ハイブリッドな力をもったキュレーターを育てます。また、本学で修得した以上のような能力は、観光、販売（流通）、マスコミ（出版、ＴＶ局）など、他の職場でもきっと活かされるはずです。

詳しくみる

フィールドをアートの視点でデザインする
フィールドデザイン

　この分野ではアートとフィールドを結びつけ、フィールドに新たな価値を生み出すことをめざします。ここで言う「フィールド」とは、街なかの中心市街地や自然豊かな中山間地を思い浮かべてみるとよいでしょう。これらの地域ではそれぞれの歴史や文化を背景に、その土地ならではの風土の中で生活文化が築き上げられてきました。しかし郊外型大型店の新規立地により空き店舗や空き家、空地が増えて疲弊が進んでいます。このままの状況では将来のさらなる高齢化の進行に対応することは困難です。

　このフィールドデザイン分野では、本学部のキュレーション分野や芸術表現コースと連携しながら地域の創生を図りたいと考えています。近年では中心市街地をはじめとする地域づくりのさまざまな場面にアート活動が組み込まれる事例が増えており、またこれまでになかった非伝統的な文化政策、地域のイメージ戦略、経済的な側面が地域変容にとって重要な鍵となりつつあります。地域づくりのプロセスの中で住民と行政、事業者等の各主体間の相互の緊密な連携関係が無視できない状況になっており、また地域の価値の再発見という点においてもアートが根本的な部分において作用しています。フィールドデザイン分野では、学生自らが地域に入り込み、課題を発見し、地域の人たちと協働し、アートを媒介としたさまざまな活動を行うことによって地域の創生を図る人材を養成したいと考えています。

　「アート」を用いた地域の創生を強調してきましたが、フィールドデザイン分野では「手わざ」といったアート力そのものを要求しません。むしろ発想力や構想力、企画力、行動力、コミュニケーション力が重要です。芸術作品のみならず、景観や風土、文化遺産、記憶や文化的概念などの有形・無形の人文・文化表象をアートととらえ、地域をデザインしましょう。フィールドデザインで培った能力は、公務員、NPO職員、観光企業、報道機関などの職場で役立つことでしょう。

詳しくみる