佐賀大学芸術地域デザイン学部

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教員紹介

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芸術表現コース

西洋画  絵画、現代美術、コミュニティアート

富田 俊明
准教授
富田 俊明
Toshiaki TOMITA
分  野:美術・工芸分野
専門分野:西洋画  絵画、現代美術、コミュニティアート
コメント
 私は絵画の研究を、作品の造形的審美的完成ではなく、イメージ生成を体験する「私」の多層性と関係性の探究という方向で進めてきた。イメージ体験による人間の変容をドキュメントする制作を発展させ、これをpoetic documentary(詩的なドキュメンタリー)と名づけた。この創造的プロセスは私の個人的な人生とパラレルであり、新しい旅を始めることは、それにふさわしいアーティスティックなアイディアを見出すことである。現在は制作のみならず教育でもpoetic documentaryを展開している。
 私にとってアートとは、生まれもった力によって、世界の呼びかけに応える方法である。これは、人を最終的には分離と孤立にみちびく「画家とモデル」像=近代的自我の枠組みを超えて、むしろブーバーの提唱する「我と汝」につうじるものである。私のいう「私」は多層的で関係論的なものである。したがって、アーティストになるということは、他者からの承認ではなく自認することであって、さらにアーティストとは何者かということは制作をとおして自ら再定義されなければならない。制作が作品だけでなく作者をも造形するという考え方がある。制作による人間形成=変容が「私」によって為されるとき、「私」の形は個性的に造形される。このとき生じるアートは、作品だけを切り取って問題とする従来型のオブジェクトレベルのアートではなく、作者や作品をその部分として含む「サイバネティックス」であり、より上位のメタレベルのアートである。このような「私」の営みを援助することは、従来の教育とは異なるものになっていく。このため私の教育実践はオルタナティブ教育の系譜に位置づくことになるだろう。学生の「私」の多層性の深さと関係性の広がりを大きく捉える私の指導空間は、従来とは異なる学生の自己実現を育む場所となると考えている。
個人・ゼミの活動
 1971年神奈川県生まれ。東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業、同大学院美術研究科壁画専攻修了、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士後期課程国際広報メディア専攻修了。富田の作品は、ソウル・アーツ・センター(韓国)、佐倉市立美術館、横浜トリエンナーレ2001、オーデンセ市立美術館(デンマーク)、NICAF2003、青森公立大学国際芸術センター、秋吉台国際芸術村、東北芸術工科大学、ハワイ大学マノア校(アメリカ)、日米文化会館(アメリカ)、釧路市立美術館、マケドニア国立美術館(北マケドニア)などで展示・上映されている。
 著書として『泉の話』(2001年)、誌上作品として『空想の島』(美術手帖1997年)がある。主な学術論文に、『自我の統御と支配を超えて:教育言説における〈変容〉理解のための理論枠組み再考』(2019年)、『海月姫を探して:卒業制作における絵画表現の対話的指導に関する考察』(2018年)、『「ストーリーテリング」の美術の教育への導入と意義(II)――小学校教員養成課程への応用――』(2013年)、『「ストーリーテリング」の美術の教育への導入と意義――イメージの内的・主観的な体験とその共有をとおして――』(2010年)などがある。
 2002年より国内外の複数の大学で講演やワークショップを行い、2006年より日本の複数の大学で絵画と現代美術を教えている。大学での教育事例研究をもとに、博士学位論文『イメージの〈出現〉と「私」の変容――大学における絵画・現代美術の制作指導の試み――』(2022年)を完成。この論文により、2022年北海道大学より博士号を授与される。2023年より佐賀大学准教授。

研究/作品

  • 母校・大野台小学校でのワークショップ《泉の話》【神奈川】
    母校・大野台小学校でのワークショップ《泉の話》【神奈川】
    【制作年】2001年
  • 《泉の話》(「横浜トリエンナーレ2001」)
    《泉の話》(「横浜トリエンナーレ2001」)
    【制作年】2001年
    【素材・技法】
    紙に水彩、写真、スピーカー、アンプ
    著書『泉の話』
    (画像はインスタレーションの一部)
  • 《Storytelling Evening》(「Blind Date:日本とデンマークのアーティストによる対話」、オーデンセ市立美術館、オーデンセ、デンマーク)を準備する富田俊明とオーサ・ソーニャスドッター
    《Storytelling Evening》(「Blind Date:日本とデンマークのアーティストによる対話」、オーデンセ市立美術館、オーデンセ、デンマーク)を準備する富田俊明とオーサ・ソーニャスドッター
    【制作年】2002年