佐賀大学芸術地域デザイン学部

佐賀大学芸術地域デザイン学部
教員紹介

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芸術表現コース

ビジュアルコミュニケーションデザイン、デザイン史

世利 幸代
准教授
世利 幸代
Yukiyo SERI
分  野:視覚伝達デザイン分野
専門分野:ビジュアルコミュニケーションデザイン、デザイン史
コメント
 デザインとは何か。この問いへの糸口は、18世紀の哲学者カントの定義にあります。カントは、既存の型や様式にしたがって制作する技術を機械的技術、そしてそうした型に囚われない自由な制作を美的技術と呼びました。カントに定義されたこれら二つの技術は、現代でいうところの科学技術と芸術にあたります。一方は、現実の社会をより良くより便利にするため、日々絶え間なく生産・進歩・発展し続ける技術的領域として、他方は、“生産”や“進歩”、“発展”に囚われた現実の社会から解放されるようなイメージをヴァーチャルに提示する文化的領域として、カントの定義による科学技術と芸術は、現代においても理解可能な対立図式だと考えられます。
さて、この科学技術と芸術の対立図式を前提に考えると、デザインとは、両領域の境界にあってそれらの融和を試みている分野だと私は考えます。芸術による自由なイメージを、一部の金持ちや教養層に制限するのではなく、科学技術との融和によって現実の生活の中で共有可能なものとすることが、デザインの役目だといえます。
デザインには、現実のいま・ここにある問題の解決を目的としつつ、目的から解放された未来を提示する技術と想像力が不可欠です。さまざまな問題が集積する“いま”(2020年代)“ここ”(九州・佐賀)で、デザインを学ぶことをとおして自分の可能性を発見してください。
個人・ゼミの活動
研究活動
1. モダンデザインの哲学的基礎に関する研究(2013~2016年)
科学技術と芸術の融和を求めた機能主義のデザイン思想の源流をカント美学に見出し、その問題点をアドルノの論考における歴史哲学の論理に基づき考察した。

2. 地域における近代化の歴史と文化表象に関する研究(2016年~)
明治期以降、国家主導の資本主義形成が進められるなか、日本トップの石炭生産量を誇った北部九州の地域は、その富の蓄積によって観光振興活動を開始し、リゾート地や避暑地を中心とした都市開発を推進した。本研究ではさまざまな印刷物に描かれる理想的な都市および人間のあり方と石炭産業における社会構造の変化について考察する。

3. 実践にもとづく研究活動として、学生と企業、地域住民の連携によって地域の歴史、自然、文化を従来とは異なる視点からアプローチし、それらを資源として活用するための地域デザインプロジェクトに取り組んでいる。(2014年~)

近年の地域活性化活動例
1: 福岡県柳川市のアサヒ醸造株式会社との連携によるパッケージデザイン制作の監修およびプレゼンテーション指導。(2014年福岡県産業デザイン協議会主催第16回福岡県デザインアワード入賞)
2: 学生と地域住民との連携による「東区まちめぐりツアー」の企画、プレゼン、広報、デザインの監修。(2016年福岡市東区いきいきまちづくり提案事業採択)
3: 幕末に建てられた町屋建築をギャラリーとして活かす試み「地域イラストレーションプロジェクト」。西日本新聞(平成29年12月12日付)、毎日新聞(平成29年12月16日付)掲載。
4: 長崎県島原地方の観光振興を目的とした島原鉄道各駅シンボルマークおよび駅名標デザインの提案。島原新聞(令和元年3月5日付)、長崎新聞(令和元年3月13日付)掲載。
5: その他、地域のデザインコンサルティングおよび近代デザイン史、地域デザイン史等に関する講義・講演等。(2013年〜)

研究/作品

  • 福岡市東区いきいきまちづくり提案事業「東区まちめぐりツアー」
    福岡市東区いきいきまちづくり提案事業「東区まちめぐりツアー」
    【制作年】2016年
    (協力: 東区歴史ガイドボランティア連絡会, デザイン監修:世利幸代)
  • 町屋建築をギャラリーとして活かす試み「地域イラストレーションプロジェクト」
    町屋建築をギャラリーとして活かす試み「地域イラストレーションプロジェクト」
    【制作年】2017年
    (協力: 箱嶋邸住宅, 東区歴史ガイドボランティア連絡会, デザイン監修:世利幸代)
  • 島原鉄道各駅シンボルマークデザインの提案
    島原鉄道各駅シンボルマークデザインの提案
    【制作年】2019年
    (デザイン:池末真弥, 監修:世利幸代)