佐賀大学芸術地域デザイン学部

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2025年度9月卒業予定学生による卒業制作個展のお知らせ
2025.07.22
お知らせ

◉ 2025年度9月卒業予定学生による卒業制作個展

・映像デザイン専攻 21121130 塚本 マーク達美

日程:7月29日(火)-8月3日(日)10:00-17:00 入場無料
場所:総合研究1号館 メディア収録演習室、研究室2

『スーパーポジション』

 本展示は、バーチャル空間とフィジカル空間の境界を探る試みとして、XR表現における実在性のスペクトルに焦点を当てた卒業制作である。既存のVR/AR表現とは異なるアプローチとして、モーショントラッキングやPortalgraphといった複数のアプリケーションを用いながら、バーチャルと現実の融合を新たな視点から立ち上げることを目指した。
 最終的に採用したPortalgraphは、鑑賞者の位置関係に応じて、モニターの向こうにある空間がひとつの正しい像として結ばれる技術である。このたった一人の観測者を基準とする構造には、量子力学における観測問題との親和性があり、観測という行為が世界の構造に直接影響を及ぼすという量子的な面白さを持っている。私はこの特性を活かし、重なり合う二つの次元、バーチャルとフィジカルを可視化することを制作の主題とした。
 本展示では、このテーマに基づき、量子力学における「量子重ね合わせ(Quantum Superposition)」に着想を得た二つの作品『プレゼンス』および『ユージン』を展示している。
『プレゼンス』では、現実と見まがうバーチャル空間に、鑑賞者以外の誰かの気配が漂う構造を通して、存在の不確かさと観測による実在の確定を体験として提示した。
 一方『ユージン』では、箱の中にいる作者自身の動きとバーチャルなシルエットが観測者の視点で重なり合う構造を通じて、観測関係の二重性とそのズレを浮かび上がらせている。
 バーチャルと現実の空間が完全に一致することはなく、常にほつれやズレが生じる故に、時に重なり合うそれらがもたらすバーチャルな存在の質量感に本展示を通じて、観測者としてのみなさんが空間にどのような実体を与えるのか、その役割を体感し、考えるきっかけとなれば幸いである。