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芸術で地域を拓く、芸術で世界を拓く―芸術地域デザイン学部記念展を開催

佐賀大学芸術地域デザイン学部の教育を担うのは24名の教員たち。教員の教育や研究活動を紹介する記念展「芸術で地域を拓く、芸術で世界を拓く」を開催しました。今回はこの展覧会でもご紹介した新任教員が「私たちが目指すもの」について語ってくれました。

表現はつねに「探していく」もの。佐賀では違うカタチで何かができれば

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ギャラリー・スタジオの奥に設置された目を引く大きなインスタレーション。「ミニマム」という表現が似つかわしいグレーの色彩とかたち、どこか記憶の断片にも似たおぼろげな映像、そしてどこからか聞こえてくるかすかな日常の音―。芸術表現コースの柳健司教授の作品です。柳先生はこれまで、空間や身体的な記憶をみる人に喚起させるインスタレーション作品で評価の高い現代アーティスト。

「現代の美術は多種多様な思想や様式によって展開されていますが、ミクストメディアでは素材や技法にとらわれてはいけない。私の芸術活動は彫刻から始まったのですが、ある日突然表現がつまらなくなることだってある。作品を創ることが好きなのか義務なのか、そんな思考を繰り返しながら、表現をつねに探してきた。表現とは、そんなものでもあるんですね」。

柳先生はこれまで、埼玉県北部・本庄市児玉町にあるスタジオ「KCA house」を中心に、国内外で作品を発表し続けてきたことも知られています。

「KCA houseは自分が生活している場所なので、芸術を特別なものにしたくない、当り前に芸術がある、というところから出発したスタジオです。そのスタジオで自由に活動する人が集まっていろんなイベントもやりました。例えば音楽会や茶会をやったりした際には、地域の人にチケットを配ったり。その活動を繰り返していると、イベントを楽しみにするおばあちゃんが出てきたり、活動が地域に人に認められて当り前になった。そんな場所です。この佐賀はKCA houseのある場所に比べるとまるで大都会(笑)。佐賀には佐賀の歴史がありますし、可能性だってある。学生が地域に加わって活動することで、これまでと違う形で何かができれば、と期待しています」。

柳健司(やなぎ・けんじ)
佐賀大学芸術地域デザイン学部 教授
東京藝術大学彫刻科卒業。
東京藝術大学大学院美術研究科、ロンドン芸術大学チェルシー美術大学大学院彫刻科修了。
1995年文化庁芸術家在外研究員、KCA house設立を経て現職
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作品を通じた「世界の見え方」の更新。発想を起こす、とは?

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消しゴム、サッカーグラウンド、ボーリング、方眼紙...。一見まるで共通項がないかのようなモノにある、私たちの「こう使うもの・こうあるもの」といった定まる意識。人はいつも自分の見たいように思ったように世界を眺めてしまう、という先入観を爽快に裏切ってくれる作品―。地域デザインコースの土屋高哉准教授は、目の前に広がっている世界の見え方を更新してくれる作品を通じて「発想力」を想起させることをテーマとしています。

「コンテンツデザイン、というものを考える際、表現媒体や技法の新旧にとらわれてしまうことはありがちな行為かもしれませんが、技術や技法、メディアから表現が生まれる訳ではないですよね。大事なのは多様なメディア間を行き来する柔軟な発想力と、論理的に構築できる分析力を養うこと。メディアの特性を活かした独創的かつ尖った創作・活動を志向することです。また発想を具現化する際には、より適した媒体や形式、技法を選択する編集力も必要になります。これらには特別な能力ではありません。誰もが今までとは違う視点を掴み、些細な事柄すら作品に昇華できる、と考えています」。

土屋貴哉(つちや・たかよし)
佐賀大学芸術地域デザイン学部 准教授
東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。
東京芸術大学大学院美術研究科修士課程修了
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デジタルメディアでの表現や情報の編集を可視化する

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芸術地域デザイン学部の前身である佐賀大学文化教育学部美術・工芸課程、通称「特美」出身の杉本達應准教授。デジタルコンテンツ、メディアアート、ワークショップのためのシステム開発、デジタル表現の歴史研究などさまざまな分野に取り組み、情報メディアを専門として、プログラミングによる表現や情報の編集を可視化する技法を研究している杉本先生。

「新しいメディアや技術はつぎつぎに登場し、表現の世界は目まぐるしく変化しているように見えますが、人や社会はそれほど変化した、といえますか?メディアは如何にあれ、私の表現・発想の基礎ができたのは、この佐賀大学です。大学で自由に好きなことをしていたこと、実験的にでもいろんな表現に取り組んだことが、社会に出てから育つこともあります。18年前に卒業した大学に、まさか教員として帰ってくることになろうとは、想像すらできませんでしたが、研究室ではデジタルメディアでの表現をさまざまな角度から考察しながら、創作や研究に取り組んでいきたいと考えています」。

杉本達應(すぎもと・たつお)
佐賀大学芸術地域デザイン学部 准教授
佐賀大学教育学部総合文化課程造形文化コース(特美)、
岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー[IAMAS]アートアンドメディア・ラボ科卒業。
東京大学大学院学際情報学府学際情報学専攻修士課程修了。
名古屋学芸大学専任助手、福山大学専任講師、札幌市立大学専任講師などを経て現職
/teacher/professors/tatsuo_sugimoto.html
http://lab.sugimototatsuo.com