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「芸術地域デザイン学部」って、なに?

佐賀大学の文化教育学部が改組され、有田窯業大学校と統合した「芸術地域デザイン学部」がスタートしました。学部長の小坂智子教授は「芸術地域デザイン学部は、地域の視点で新しい価値を創る〈人材〉を育てる場所」と学部について語ってくれました。

「創る」人から「伝える」人へ―。佐賀という地域で学ぶ「メリット」

―芸術地域デザイン学部とは、どんなことを専門とする学部ですか?

「芸術で地域を拓き、芸術で世界を拓く」人材を育てる学部です。本学部には2つのコースがあります。「芸術表現コース」と「地域デザインコース」です。

芸術表現コースは「芸術を自ら創造・表現し、地域創生に貢献する人材」、地域デザインコースは、「文化芸術を支え、新たな付加価値を生み出し、地域創生に貢献する人材」を養成します。

芸術表現コースは、「美術・工芸分野」と「有田セラミック分野」の2つに分かれています。美術・工芸分野は、60年以上の歴史を誇る佐賀大学美術・工芸教室が礎となったもので、有田セラミック分野は有田窯業大学校との統合を基に、有田キャンパスで窯芸、ファインセラミックスを学びます。地域デザインコースは、3つの分野に分かれています。地域の文化資源に関わるコンテンツを、映像、ウェブデザインやCGインタラクティブ作品など情報メディアを用いて創造する「地域コンテンツデザイン分野」、学芸員やキュレーターの養成を主とした「キュレーション分野」、地理や歴史、流通・マーケティングや都市デザインといった幅広い分野をフィールドから学ぶ「フィールドデザイン分野」です。

―芸術の分野、といってもいろんな研究分野に分かれているのですね。それぞれの研究分野の技術や感性、を学ぶのが芸術地域デザイン学部、ということでしょうか?

各分野に分かれて専門を深めていくのは2年生からになりますが、芸術表現コースでも、地域デザインコースでも、ただ単に絵を描くやきものを作る、映像やウェブを作る、などといった「創る」技術や感性を学ぶ、といったことだけではありません。技術や感性を得ることは重要ですが、いまの社会で求められていることは、芸術を社会に開いていくことや、芸術をさまざまな産業や地域創生の動きに結び付けることです。そのためのコミュニケーション能力や実践力も必要です。美術史や考古学などの専門的な知識、社会とアートをつなげるために不可欠な経済・経営、アートマネジメント、異文化コミュニケーションなども幅広く学べるようにカリキュラムを編成していることも、本学部の特長です。

―コミュニケーション能力や実践力は、芸術分野に止まらず、さまざまな分野でも重要性が叫ばれていますが、とくに感性を刺激する、ある意味で情報が氾濫する「大都市」という訳ではなく、この佐賀という「地域」で芸術分野を学ぶことは、どんなメリットがあるのでしょうか?

都市が発展していく過程のなかで、経済的な合理性や時代の観点から失われた大事なものもたくさんあるのではないでしょうか。本学部のキャンパスは佐賀と有田、2つに分かれていますが、それぞれの地域の歴史や文化、それぞれの地で育まれてきた芸術や芸能はかけがえのない地域の「個性」であり、地域の「アイデンティティ」です。個性やアイデンティティは社会の魅力の源泉といえます。佐賀と有田といった地域の固有の魅力を再発見し、それらを活かした取り組みを喚起することも、芸術地域デザイン学部の重要な役割のひとつです。芸術や文化を理解し、生み出す感性をはぐくみながら、芸術という分野を通じて、地域の人に魅力を「伝える」力を養うこと。地域の魅力を再発見し、地域社会を活性化するためにプランを練ること。学生という自由に研究できる立場でこのような経験は、卒業後、ローカル、グローバルを問わず、どんな社会でも生かしていくことができる力となります。

キュレーション(キュレーター)という仕事

―さて、芸術地域デザイン学部において、小坂先生の専門となるのは「キュレーション分野」ということですが、キュレーションとは、どんなことをする専門分野ですか?

キュレーションとは、博物館や美術館で学芸員が行っている仕事全般を指す言葉ですが、同時に展覧会やアート系のイベントなどを組織することもさします。博物館や美術館で専門職として働くためには、学芸員の資格が必要ですが、学芸員資格を取得するためには、大学で博物館に関する学問領域である博物館学を学ぶ必要があります私自身、美術館で働いていたことがありますが、キュレーターとして働くためには、専門領域の研究に加え、多様な人々とコミュニケーションする力や、どのようにプレゼンテーションするかという能力など、多くのことが求められる仕事だと思います。その分やりがいを感じる仕事です。

博物館・美術館という「アーカイブ」を活かす

―学芸員の資格を取得することは、どんなメリットがありますか?

資格取得後に、学芸員・キュレーターとして仕事をする道は、実は狭き門です。大学で取った資格が卒業後そのまま仕事になるという資格とはいえません。芸術地域デザイン学部のキュレーション分野で学ぶことは、学芸員として働くスキルを身に付けるだけではなく、地域の文化資源や情報をどのように活用していくかということを考えるための、発想や視点の多様性や、社会への応用力を獲得することだと考えています。

美術館や博物館は、芸術作品や歴史資料を保管・展示しながら後世に伝える役割が一般的な目的となっています。地域や社会のなかにも、活かせる情報がこの博物館というアーカイブのなかに眠っていることがあると思うんですね。アーカイブから新しい情報や発想、視点を拾い上げ、地域や社会に伝え、地域や社会に新たな視点を提供する可能性を持った場所が博物館であり、美術館です。佐賀大学には国立の総合大学としては全国で唯一の「佐賀大学美術館(SUAM)」があります。この佐賀大学美術館も単に展示するという場ではなく、地域のみなさまに開かれたオープンスペースとして、地域の魅力を「伝える」場としても活用できたらと思います。